2011/12/05

At the Bottom of the Gravity Well

タイトルと全く関係ない話題から入ります。
ツイッターでも驚きのあまり一日かけて騒いでしまったのですが、先週末、荒木伸吾氏の訃報がありました。
非常にショックでした。奇しくも星矢の誕生日でした……
特にこれといった趣味も、別に飛び抜けて好きなものもなかった子供の頃の自分が生まれて初めて『ハマった』のが、アニメ版の星矢でした。
一話から見始めたわけではなく途中からの視聴だったので、よく覚えていないのですが、初めて見た時にストーリーをすぐに理解したということはなかったはずです。
惹かれたのは『絵』でした。
それはその後ストーリーを追いたくて仕方がなくなって原作を手に取った時、強烈な違和感を覚えてしまったことを思い返してしまったことからも確実です。
結局、アニメにはまっていた当時の自分は、原作を揃えることはありませんでした。
私が欲しかったのは『アニメ絵の星矢』だけだったからです。(別に原作を貶めるつもりはありません。現在は全巻、文庫版ですが所持しています。当時の自分の嗜好と事実を述べているだけです)
それほど、氏の絵に傾倒していました。
当時のアニメは毎回作画監督が変わるとはっきり分かる程度のクオリティで、次回予告を見て次は絵がきれいだとか好みじゃないとか一喜一憂していたのですが、荒木氏の作監の回は中でも別格でした。
今の自分の嗜好のベースには、間違いなく氏の影響があります。
そんな方がもうどこにもいらっしゃらないという事実に、想像以上の喪失感を感じています。
素敵な作品に出会わせてくれてありがとうという感謝の念と、こんな道によくもハマらせてくれたなというすこしばかりの恨み節(どちらかと言うと八つ当たりに近いですが)。
そんな相反する思いと共に、心よりご冥福をお祈りしたいと思います。
いつまでも、ファンで居続けます。


さて、タイトル通りの本題に移ります。
先月、たった2週間(11/12~11/25)の先行上映が終わってしまったガンダムUC、Episode4『重力の井戸の底で』の感想など、今さらながら書いてみたくなりました。
今さらって言うより「終わった今ならもう言ってもいいよね」というところではありますが。

そういえば以前、ツイッターかどこかで、原作者の福井晴敏氏が手がけられた∀小説があまりにもトラウマすぎてUCも怖くてあまり読みたくないというようなことを愚痴ったような気がしますが、結局原作は文庫版を全部入手してしまいましたw
とりあえず6巻くらいまで我慢して読んだ所で、氏の作品の地雷回避策がわかったのは収穫でした。
お陰で先はあまり精神的に来ることもなく読めましたw
やっぱり以前に、どこかで白状したとおりネタバレ大歓迎な人間ですので、地雷回避方法を会得してからはかなりわくわくしながら読み進めることができました。
しかもこの先の大筋をだいたい把握したぶん、アニメで原作とどう変えてくるかを探すという楽しみが加わったので、やっぱりネタバレっていいなぁと最確認するなど。
でも最終巻、時間の関係でまだ半分くらい読んでない……
まあ急ぐことでもないので、時間がある時にゆっくり読みます。
いくらなんでもアニメで最終話が公開される前には終わるはず。

で、Episode4の感想です。
公式で先に公開されていた冒頭6分の映像を見た時に、中盤のストーリを相当変えてくるらしいとわかって少しばかり不安を感じていました。
だって大体原作付きのアニメで、アニメ独自のストーリー展開になった途端、くsいまいちになるのは結構お約束じゃないですか?(←偏見)
しかし!
見事なまでに不安は杞憂に終わっていて実に爽快でした(*^ー^)
ストーリー的には2つだったものを1つにまとめてあるという大変更ながらも、端折られたという感じは全くなく、しかも肝は押さえつつも原作よりもストーリーがわかりやすい親切仕様。
原作ではかなり念入りに描写されていた首都ダカールでの戦闘が、ガランシェールが落ちたことを隠蔽するための陽動として簡単に描かれているだけだったことは残念どころか胸をなでおろす始末。
というのもダカール戦、例の自分的地雷シーンが多くて、正直好きではなかったもので。
あそこまで陰惨な描写が、果たして本当に必要なのかと読みながら首を捻りっぱなしだったんですよね。
でもまあそのぶん、リディの活躍が大幅削減されていてちょっと可哀想だったかもw
シャンブロも、ガーベィ一家での操縦ではなく、ロニさん一人乗りになっていたのも大きい変更でしたね。
イスラムがどうとか民族がどうとかねちねち主張していた部分が、家族を惨殺されたロニさんの復讐劇という大変わかり易いまとめ方になっていて、アニメで見せるにはこちらのほうが断然良かったと思います。
マーサがマリーダを絡めとっていくシーンなんかも、男がどうとか女がどうとかねちっこい内容でグタグダ進まず(そういった台詞はありましたが)、マリーダの過去のトラウマ(なんて言葉で言い表せるほど軽いものではないのでしょうが)を引き合いに出して、比較的さっくり表現してくれたのでこれまた良かったです。
小説的には掘り下げるのに必要なんだろうネチネチ部分が、この作者さんのものに関してはどうにも苦手らしいです……(´・ω・`)
もうちょっと別の掘り下げ方もあるだろうにとも思うんですけど、それがその作者さんの趣味なんだろうなとも思うし、いやはやなんとも。

閑話休題。
では次に、細かい部分で気になったところを手短に(なるのか?)w

・ジンネマンとバナージの砂漠越え
 尺の問題もあるんでしょうが、二人っきりでの砂漠越えにしてはちょっと描写が楽すぎるような感じだったかも。
 まあ行動している夜のシーンばかりなので、灼熱感とか砂まみれな感じがあまりなかったせいかな。
 夜空を見上げての二人の会話シーンは良かったです。
 バナージ泣き虫w 
 ジンネマンも良い人寄りの普通の人描写。前回のダグザを彷彿とさせました。
 原作読んでなかったら死亡フラグだと思ったかもw
 この後、ストーリの大幅変更のせいでダカール観光編と未成年バナージの飲酒なんかがまるっとカットされていたのがちょっとだけ残念。
 あそこだけは好きなシーンだったので。

・リディがミネバに抱きつくシーン
 ミネバが両腕のやり場に困ってわきわきさせていたのがかわいくて印象的でしたw
 本当なら、なんだかわからないけど思わず縋りついてくるくらいには深刻そうなリディを抱きしめてあげるのが筋と多分わかってはいるんですよ。
 でもそんなことをしたことがないから恥ずかしくてできないのか、はたまたリディに対しては『そういう意味』の感情までは抱いていないのでできないのか。
 なんだかニヤニヤできる数少ないシーンでしたw
 リディにとっては、台詞だけで表現されていたその後――ミネバにプロポーズのようなセリフを吐いて否定されたという事実――が、ニヤニヤどころか本当の意味でのターニングポイントになってしまったという意味で非常に重いシーンでもあるんですけどね。

・ブライト艦長!
 夭折された鈴置氏の代わりに成田剣氏が声を当てていますが、違和感がぜんぜんないです!
 成田氏で紫龍が聞いてみたいところですw

・逃亡したミネバがダイナーの主人と語らうシーン
 ここの担当、村瀬修功氏だと見た瞬間確信したんですけど、多分間違ってないですよね?(真剣)
 ダイナーのおやっさんの手の描き込み、ミネバの指先。
 細かい部分なのに不思議なくらい目を奪われました。
 しかもこのシーンのミネバの凛々しくて美しいことと言ったらもう!
 ……どうでもいいけど、お金ってどうやって工面したんでしょうね?
 原作ではシンシアさんがいるけど、アニメでは存在すら確認できませんし。

・ジンネマンとバナージの殴り合い
 小説では結構バナージもボコられてたはずなんですが、アニメでは主人公補正が最大限に発揮されて相好が変わるようなことにはなりませんでしたw
 ジンネマンはボコボコでしたけどね……
 両手を頭の後ろに組みながら「今、手が離せないんで、ご自分で何とかしてください」と応じる任務熱心なフラスト達がとてもよかったですw

・シャンブロ大暴れ
 もっと悲惨な描写になるのかと覚悟を決めていたのですが、想像していたよりもあっさりしていたのでほっとしました。
 それでも、赤ちゃんを抱いた女性が吹っ飛ぶシーンとか、避難所と思しき建物が粉砕されるシーンなんかはやっぱり辛かったです(´・ω・`)
 一般民が被害を受ける描写というのはやはり、恐怖感が直接に喚起されるのでキツイですね。
 ロニの背後、ジオンのマークがホラーじみてました。
 常に共にあって逃れられないしがらみ、後で呪いという言葉も出ていましたが、ロニにとってはどうやっても振り払えない怨念が塗り込められたものなんでしょう。
 同時に、唯一の『居場所』なんですよね。
 哀しいね。

・ロニvsバナージ
 バナージはガンダムの主人公にしては不思議と感情移入しやすいキャラだと思っていたのですが、それを今回改めて再確認しました。
 大抵が極限状態にあるジオン残党の皆さんに対して、バナージはいかにも『普通』なんですよ。
 だからバナージの叫ぶ言葉も、現実世界の一般論に近いものではないかと思います。
 事実を見て聞いて、一応理解してはいるけれど、それでも綺麗事を多分に含んでいる。
 そうであっても、その綺麗事は繰り返しジオン残党の人々に対して説いていかなければならないものなのだと、私達観客には理解できる。
 でも画面の向こうのあの人達には、最後の一線で受け入れがたい何かがあるんだろうこともわかる。
 そういったすれ違いがあの最期を生んでいるのだと思うと、やはり哀しいものです。

・動く戦争博物館
 実を言えばモビルスーツにはあまり明るくない(見分けがつかないことが多い)自分ですら、なにやら絵的にすごいことになってるのは理解しました。
 やられ一方だった連邦軍に突如現れた救世主がバイアランて名前だったことは上映後にツレに聞いて分かりました。
 あれ、強かったなぁ……(゚∀゚)
 
・リディ+バナージ 他トリントンでの戦闘シーン
 「勘がいい」と小説で書かれていた二人の息の合い方を見せつける場面がちらほらありました。
 コクピットのオールビューモニタから見える街の風景やその見え方に、すごい臨場感を感じて感動しました。高いところ好き~\(^o^)/
 かつて落とされたコロニーの残骸の巨大さにも圧倒されました。絵ってすごいね。
 唐突に展開されたオーラバトルにちょっとびっくり。吹っ飛ばされた車と民間人さん可哀想(´・ω・`)
 この後のバンシィ戦でのサイコフィールド張り合いの前ふりなんだろうけど、あまり必要のない描写だった気も……

・ロニの最期
 どうしてもロニのいるシャンブロに向けて一撃を放てなかったバナージからビームマグナムを取り上げて撃った瞬間、リディは本当に暗黒面に落ちてしまったのかもしれません。
 未だ箱の中身がなんなのか全く想像のついていないバナージはあくまでまだ見ぬ『可能性』を信じ、すでに何もかもを知ってしまっているがために『可能性』に殺されると叫んだリディと。
 立場や思いの違いが哀れなほど明確になりました。
 ことごとく物事をはっきりさせてきた回でしたね。
 最後に「おまえさえいなければ……」とつぶやいたリディの本心はきっと、羨望の一言で表されるのではないかと思います。
 まだなにも知らないからこそ無邪気に可能性を信じていられるバナージが羨ましいというか、嫉妬しているんだろうなと。
 ミネバとのことも拍車をかけているんでしょう。まあなんというか……可哀想な人です。

そういえば撃った直後、肩部に出たエラーを伝える画面が出たりする描写が妙に細かくて好きですw
そのあたりのシーン、BGMも相まって盛り上がりが半端無かったです。
デルタプラスが一撃で逝っちゃったほどの反動を出す武器を、なんなく連射できてしまうユニコーンてえらい頑丈にできてるんですね(゚∀゚)
最後にバンシィが顔見せだけしたのはまあ、予想の範囲内でした。
まだ色々書き足りない部分があるような気もするんですが、長くなってしまったのでこのくらいでやめておきます。
次は5月。
楽しみだけど、次回もちゃんと北海道で上映してくれるかなと考えるとちょっと不安……(´・ω・`)
また劇場で見たいものです。

これだけだらだら書いて最後に書くのもなんですが、前回の本館更新後に拍手をくださったお客様、どうもありがとうございます!
いつも励みになっております。
次回も頑張ります(*^ー^)